- 浅煎り
コスタリカ ケブラダ・グランデ
COSTA RICA
ハーバルなニュアンスを帯びた香りから、オレンジやレッドカラントを思わせるみずみずしい果実味へ。ラズベリーの華やかな印象に、アプリコットのやわらかな甘さが重なり、最後はキャラメルを思わせる穏やかな余韻が静かに続きます。
| 生産地 | コスタリカ |
|---|---|
| 農園 | ケブラダ・グランデ |
| 地域 | タラス |
| 標高 | 1,700〜1,850m |
| 品種 | サン・ロケ(SL28) |
| プロセス | イエローハニー |
ABOUT
コスタリカ・タラス地区に位置するケブラダ・グランデ農園は、ロス・アンヘレス・マイクロミル(Los Angeles Micromill)が所有・運営する農園です。マイクロミルとは、生産者が農協へチェリーを出荷するのではなく、自ら精製・乾燥までを行い、品質を一貫して管理するための小規模な精製施設のこと。コーヒーづくりの最終工程まで自分たちの手で担えることから、コスタリカのスペシャルティコーヒーを大きく発展させてきました。生産を担うのはルイス・ディエゴ・カルデロン・カスティージョ氏を中心とするカルデロン家。彼らは栽培から精製まで一貫して品質を設計し、コスタリカを代表するスペシャルティコーヒーの生産者として世界的に高い評価を受けています。
2009年に設立されたロス・アンヘレス・マイクロミルは、それまで地域の農協へチェリーを出荷していた体制から、自ら品質を管理し、自ら価値を届けるために生まれました。その挑戦はわずか2年後、Cup of Excellence優勝という結果につながり、小規模な家族経営でも世界トップレベルの品質を実現できることを証明します。その後もドン・カジートをはじめ複数の農園で受賞を重ね、カルデロン家はコスタリカを代表する品質設計者として存在感を高めてきました。
ケブラダ・グランデも、その思想を受け継ぐ農園のひとつです。標高約1,800mの恵まれた環境で、サン・ロケやモカといった高品質品種を栽培し、植栽から間もないタイミングでCup of Excellence入賞を果たしました。優れた土地だけではなく、その可能性を引き出す経験と技術が、このロットにも息づいています。
VARIETALS
サン・ロケ(SL28)品種サン・ロケは、単なるSL28の別名ではありません。ケニアで誕生したSL28をコスタリカへ導入した際、多湿な環境では枯死や枝折れ、結実不良など、多くの個体が本来の力を発揮できませんでした。
そこでコスタリカの生産者たちは、厳しい環境の中でも優れた耐風性・耐病性とカップクオリティを示した個体だけを長年にわたり選抜。その結果、コスタリカの高地で安定して高品質なコーヒーを生み出せるセレクションとして確立されたのがサン・ロケです。現在では単なるSL28の別名ではなく、コスタリカで磨き上げられた品質規格として流通するケースも増えています。
気候変動が進む今、優れた環境適応能力とトップクラスの品質を兼ね備えたサン・ロケは、これからのスペシャルティコーヒーを支える存在として期待されています。カルデロン家もまた、その可能性を早くから見出し、この土地だからこそ表現できる味わいを育て続けています。
PROCESS
イエローハニーロス・アンヘレス・マイクロミルが手がけるイエローハニー(Yellow Honey)プロセスは、ミューシレージを約50%残し、約11日間かけて乾燥させる緻密な精製です。目指しているのは、発酵による個性を際立たせることではありません。素材そのものが持つ透明感と、土地や品種が育んだ美しさを、そのままカップへ映し出すことです。
その品質は、パルピングの瞬間から設計されています。エコパルパーのゲート圧や使用する水量を細かく調整し、ミューシレージを狙い通りの割合で均一に残すことで、乾燥工程まで見据えた理想的な状態をつくり出します。
乾燥は、多層式グリーンハウスの温度差を活用した二段階で行われます。乾燥初期は温度の高い上段で表面の水分を素早く取り除き、過度な発酵を防止。その後は下段へ移し、内部までゆっくりと均一に乾燥させます。表面だけが先に硬化する「カプセライゼーション」を防ぐことで、内部に水分が閉じ込められることなく、最後までクリーンで均質な品質へと仕上げられます。
華やかな香りや明るい果実味を支えているのは、こうした繊細な乾燥技術です。精製方法は個性を加えるためではなく、その年、その土地、その品種が持つ魅力を濁らせることなく届けるために設計されています。
ROASTER'S COMMENT
このロットとの出会いは、2024年に届いたオファーサンプルでした。数あるサンプルの中で自然と手が伸び、迷わず買い付けを決めたのがケブラダ・グランデのサン・ロケです。その時は「よいサン・ロケに出会えた」という印象で、現地に残っていた在庫も確保することができました。その後訪れたCup of Excellenceのカッピングで、再びケブラダ・グランデの名前に出会います。Natural部門、Washed部門と、精製方法が異なっても印象に残るカップを追っていくと、そこには同じ農園、同じ品種がありました。精製が変わっても惹かれる理由は変わらない。その瞬間、この農園の品質は偶然ではないと確信しました。さらに生産者を調べると、そこにあったのはカルデロン家の名前でした。思い返せば、私たちが毎年心を動かされてきたドン・カジートもまた、カルデロン家が手がける農園です。気づけば私たちは、カルデロン家が設計する味わいに惹かれていたのでした。
このサン・ロケは、その確信を与えてくれた特別なロットです。カルデロン家が積み重ねてきた経験と、タラスという土地、そして未来を見据えた品種選び。そのすべてが重なり、このコーヒーには、これからのコスタリカの可能性が静かに映し出されています。(バイヤー/ 佐藤)