- 浅煎り
エチオピア コケ ナイトロジェン・ナチュラル
ETHIOPIA KOKE NITROGEN NATURAL
このロットではナイトロジェン・ナチュラルと呼ばれる、窒素ガス環境下で行う発酵法が採用されています。発酵を強く進めるのではなく、果実がもともと持つ甘さとフローラルな個性を最大限に残すこの手法により、赤紫系の花やフルーツを思わせる芳醇なフレーバーをお楽しみいただけます。
| 生産地 | エチオピア |
|---|---|
| 地域 | イルガチェフェ |
| 標高 | 1,900 m |
| 品種 | ヘイルーム |
| プロセス | NITROGEN NATURAL |
ABOUT
コケ・ウォッシングステーションは、エチオピア南部・シダマ州ゲデオ県イルガチェフェ地区北部、Koke村(標高 約1,900〜2,100 m)に位置する精選施設です。この地域は、在来アラビカ種がほぼ野生の状態で生育している“フォレストコーヒー”地帯として知られ、原生林が現在も色濃く残っています。国際スペシャルティコーヒー市場においては「Koke Natural」や「Koke CM(Carbonic Maceration)シリーズ」として高く評価され、イルガチェフェの名を代表する生産拠点のひとつに位置づけられています。
VARIETALS
ヘイルームエチオピアの原生種。中でも南部高地系が高く評価される最大の理由は、その明瞭なフローラル香と紅茶様の透明感にあります。典型的な風味は「ジャスミン、ベルガモット、ピーチ、レモン、ホワイトティー」で表現され、カップ温度が下がるにつれて「白葡萄や蜂蜜、ハーブティー」のような柔らかな香気へと変化します。
PROCESS
ナイトロジェン・ナチュラルナイトロジェン・ナチュラルは、嫌気性発酵(アナエロビック・プロセス)の中でも特に窒素ガス(N₂)環境下で行う発酵法です。タンク内の酸素を完全に排除し、窒素で満たすことで、果実本来の酵素活性や芳香成分を酸化から守ります。
このプロセスで生まれるコーヒーは、酸味が穏やかで、ハチミツのような質感と、花のようにやわらかな香りが特徴です。目的は「酸を造ること」ではなく、「香りを壊さないこと」。発酵を強く進めるのではなく、果実の中にすでに存在している香味構造を静かに引き出すことを重視しています。そのため、Nitrogen Naturalは“静的発酵”とも呼ばれます。発酵のテンションを低く保ち、微生物の活動を最小限に制御することで、果実がもともと持つ甘さとフローラルな個性を最大限に残すのです。
ROASTER'S COMMENT
初めてこのロットをカッピングしたとき、最初に感じたのは赤ワインを思わせる華やかでワイニーなアロマでした。しかし、その香りの奥からはやわらかな質感が広がり、最後には澄んだ余韻が静かに残る——そんな立体的な印象を受けました。 発酵による味わいがありながらも、味わい全体には透明感があり、「発酵が主張する」のではなく、むしろイルガチェフェという土地の美しさをそっと引き立てている。窒素によって精密に制御された環境が、フローラルノートをより清らかに際立たせ、酸を優しく包み込みながら、厚みと甘みのあるテクスチャーを形づくっています。今回、このEthiopia Koke Nitrogen Naturalを選んだのは、私が理想とする「状態の崩れない構造」が、最新の技術によって体現されていたからです。エチオピアらしい華やかさの中に、窒素プロセスという技術が見事にかけ合っている。発酵の存在は確かに感じるのに、酸は柔らかく穏やかで、その分フローラルな香りが一層ふわりと立ち上がる——そんな繊細な調和に心を掴まれました。 カップを傾けるたび、従来のナチュラルやアナエロビックとは違う“静かな革新”を感じます。エチオピアの持つ個性をより透明に、より洗練された形で引き出すこのアプローチには、技術を超えた美しさがあります。
ふと、「もしこの手法をパナマのような華やかな産地に適用したら、どんな表情を見せるのだろう?」という想像が膨らみました。香り高い豆たちが、この窒素の手の中でどのように変化するのか——そんな未来への期待も、このロットを選んだ大きな理由のひとつです。伝統的なナチュラル精製と最先端の技術が出会い、共鳴することで生まれた新しい表現の可能性。 多様な価値観が広がる今だからこそ、素材の輪郭を一切汚さない「洗練」のあり方を届けたい。 私が確信したその「状態の正しさ」が、あなたの感覚と静かに重なる瞬間を、ぜひその舌で受け止めてください。(グリーンバイヤー/ 佐藤)