- 浅煎り
コロンビア ラ・ナチュラ農園 ウシュウシュ セレサ・ハニー
COLOMBIA LA NATURA WUSH WUSH CREZA HONEY
口に含んだ瞬間、ふわりと花が咲くように立ち上がるフローラルの香り。続いて現れるのは、洋梨やグリーンアップルを思わせる瑞々しい果実味、そしてライチのように澄んだ甘さ。時間の経過とともに、ハチミツのような粘度を感じる甘さを感じます。
| 生産地 | コロンビア |
|---|---|
| 農園 | ラ・ナチュラ農園 |
| 地域 | ウィラ |
| 標高 | 2,250 m |
| 品種 | ウシュウシュ |
| プロセス | セレサ・ハニー |
ABOUT
ラ・ナチュラ農園は、2015年に放棄されていた有機農地から始まりました。多くの場合、農園の再生は「どれだけ効率よく植え、どれだけ収量を上げるか」から考えられます。しかし、ここでは順番が逆でした。まず考えられたのは、"森をどう残すか"。農園内には、生態回廊(リビング・コリドー)と呼ばれるエリアが点在しています。これは森と森を分断せずにつなぐため、意図的に残された原生林の帯です。その中では鳥や昆虫、微生物が行き交い、農園全体が一つの生態系として機能しています。
コーヒーは、この環境の「中心」ではなく「一部」。自然を管理するのではなく、土地のポテンシャルが持続する構造を整える。ラ・ナチュラ農園のコーヒーづくりは、最初からその思想に基づいています。
PROCESS
セレサ・ハニー(Cereza Honey)は、一般的なハニープロセス(果肉を除去した後、粘液質を一部残したまま乾燥させる精製方法)をさらに発展させたコーヒーの精製手法です。最大の特徴は、コーヒーチェリーを収穫した段階で発酵の方向性を設計する点にあります。発酵は専用のタンク内で行われ、畑や周囲の環境に由来する自然な微生物に加え、目的に応じて選び抜かれた乳酸菌と酵母を意図的に投入します。乳酸菌は、穏やかでなめらかな酸を生み出し味わいの輪郭を整える役割を担います。一方、酵母はフルーツや花のような香り成分を引き出し、香味の奥行きを広げます。どのような風味を表現したいのかを明確にしたうえで、発酵がコントロールされた形で始まります。発酵中の温度は低めに保ち、時間も短く設定されます。これは、発酵による過度な個性や雑味を避けつつ、必要な複雑さだけをコーヒーに残すための設計です。
発酵を終えたチェリーは果肉を取り除かれますが、その時点でミューシレージ(果肉と種子の間にある粘液質)はすでに分解が進んだ状態になっています。その結果、霧が多く湿度の高い高地環境でも乾燥がスムーズに進み、ロットごとのばらつきが少ない、再現性の高い品質を維持することができるのです。
VARIETALS
ウシュウシュウシュウシュ(Wush Wush)という品種をご存知でしょうか。ウシュウシュは、もともとエチオピアの森に自生していた複数の異なる品種の総称。自然交配などによりさまざまな特徴を持っていたため、味が不安定だと思われがちな品種でもありました。
ラ・ナチュラ農園のフェリペ・オスピナ氏は、その多様性の中に、空に向かって高く伸びる系統と、地に近い位置でコンパクトに育つ系統があることに着目し、特定の種のみを選定し、あらたな栽培をはじめます。植物にとって、成長に使えるエネルギーは限られています。高く伸びる系統は、幹や枝葉を広げることに多くのエネルギーを費やします。一方で、背の低い系統は、成長に必要なエネルギーを最小限に抑え、その分を果実の成熟へと注ぎ込む構造を持っていました。フェリペ氏が下した判断は、最も効率よく甘さを果実へと届けられる“背の低い系統”だけを特定するということ。その上で「なぜこの香りが生まれるのか」「なぜこの甘さにたどり着くのか」その因果関係を一つひとつ整理し、結果が再現されるものだけを残すという選別を行いました。
現在、ラ・ナチュラ農園で栽培されているウシュウシュは、この特性を持つ系統に限定されています。本ロットが持つ華やかさと密度のある甘さは、その選択の積み重ねが生み出した、必然の味わいなのです。
ROASTER'S COMMENT
2025年末に訪れた La Natura Farm は、森をどう残すかを起点にコーヒーづくりを行う農園です。生態回廊が保たれ、希少な動植物が共存する環境の中で、標高や気温といった数値以上に、人の意思と時間の積み重ねが味を形づくっていることを実感しました。この土地では、無理に主役をつくる必要はありません。土地に合った品種が、自然に力を発揮すればいい。その答えのひとつが、このWushWushなのだと思います。流行や派手さではなく、時間をかけて納得できるものを選ぶこと。自然と人が向き合い、意思を積み重ねた先に生まれる味わいを、私たちは大切にしています。 La Naturaとの対話と継続的な関係の中で、このWushWushをお届けできることを、私たちはとても嬉しく思っています。ぜひ、ゆっくりとドリップしながら、このコーヒーが生まれた背景にも耳を傾けてみてください。(バイヤー 佐藤)